握り方ひとつで味が変わる?

おむすび作りの意外な奥義、それが「握り方」です。実はこれ、見た目を整えるだけでなく、味や食感、さらには保存性にまで大きな影響を与える、とても重要な工程なんです。

まず、ふんわりと優しく握ったおむすびは、ごはんの粒がほどよく空気を含み、ふっくらとした食感になります。口に入れた瞬間に、ふわっとほどけるような軽やかさがあり、お米本来の甘みや香りも引き立ちやすいのが特徴です。家庭で出来たてを楽しむなら、こうしたやわらかめの握りが一番。温かいごはんのやさしいぬくもりと、お米のふくよかな味わいが、まさに手作りならではの幸せを感じさせてくれます。

一方で、しっかりとした握り方も場面によってはとても重宝します。たとえば、行楽やピクニック、長時間持ち歩くお弁当用のおむすびには、ある程度しっかりと握った方が崩れにくく、形が安定します。移動中にカバンの中で潰れてしまったり、食べるときにボロボロと崩れてしまう心配が少ないので、安心して持ち運ぶことができます。ただし、しっかり握るといっても「ぎゅうぎゅう」と力を込めすぎてはいけません。あくまで、粒の形を壊さない程度の適度な力加減がポイントです。

実はこの「力加減」こそが、おいしいおむすびを作るための最大のコツでもあります。握りすぎてしまうと、ごはんの粒がつぶれてしまい、もっちりを通り越してべちゃっと重たくなってしまいます。さらに、冷めたときには固くなりやすく、食感が悪くなってしまうことも。だからこそ、重要なのは“にぎりすぎない”こと。熱々のごはんを、手のひらで優しく包むようにしながら、たとえば三回ほどふんわりと成形する――これだけで、まったく違う仕上がりになるんです。

握るときには、手に少量の塩水をつけるのも大切なポイントです。塩味がほんのりと全体に広がり、お米の甘さが引き立ちます。また、手にごはんがくっつきにくくなるので、成形もしやすくなります。具材を中心にしっかりと収めながら、外側からやさしく包み込むように形を整えていく。その一つひとつの動作に、作り手の心が込められているのです。

手の中にごはんを包み、思いをこめて形作る――それだけで、いつものごはんが不思議と特別なものに変わります。おむすびは、ただの「食べ物」ではなく、誰かを思いやる気持ちが形になった、日本の素朴でやさしい文化の一つなのかもしれませんね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA